yukarashi’s diary

おもに映画や写真について書いています。ドキュメンタリーが好きです。

「ディン・Q・レ展 明日への記憶」@森美術館

  ディン・Q・レは1968年ベトナム生まれのアーティスト。78年に家族でアメリカに移住し、カリフォルニア大学で美術を学び、現在はホーチミン在住だそうです。私は今回の展示で初めて彼のことを知りました。
ベトナム戦争」をテーマにした作品の数々はどれも印象深く、充実していました。さまざまな角度からベトナム戦争を考察し、そして戦後から今日まで繰り返され消費されてきた「戦争」のイメージをめぐる作品群でした。
 まず印象に残ったのは、戦争にまつわる写真のイメージをベトナムのゴザ編みの手法を模して仕上げた「フォト・ウィービング」シリーズ。
それから、ベトナム戦争を描いた映画『地獄の黙示録』(1979)と『プラトーン』(1986)から、似通ったシーンを編集して並列展示した「父から子へ:通過儀礼」という作品。『地獄の黙示録』の主演はマーティン・シーン、『プラトーン』の主演はチャーリー・シーンで、実際の親子です。ベトナム戦争のイメージがハリウッド映画においてどのように表象され、繰り返されてきたのか、いろいろな映画を比較したら何か発見がありそうだなーと思いました。
 ほかにも、軍服を着て当時の状況を再現しながら戦争を追体験するという趣味を持つ日本人男性のドキュメンタリー映像も興味深いものでした。実際には戦争を体験していない世代ながらも、戦争映画やミリタリーに深く傾倒している人たちのメンタリティをうかがい知ることができます。この作品の被写体となっている男性は、自分の興味を語ることがとても上手で、どうしてベトナム戦争に惹かれるのかという彼なりの理由は、理屈としては少しだけ納得できる気もしました。戦争映画や軍隊モノが好きな人といっても、軍服好きとか単にコスプレが好きな人もいるだろうし、あるいはサバイバルゲームが趣味という人たちもレジャーとして楽しむ人、戦争を疑似体験したい人…と、実態は人それぞれなのだろうと思えてきました。

 なかなかボリュームのある展示で、私はじっくり2時間掛って鑑賞しました。平日22時まで開館(火曜除く)なんて、大変ありがたいです!