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yukarashi’s diary

おもに映画や写真について書いています。ドキュメンタリーが好きです。

「ジャック=アンリ・ラルティーグ 幸せの瞬間をつかまえて」@埼玉県立近代美術館

 その昔、高校生の頃、写真部の顧問から「座礁した船」を撮影しに行くよう勧められた。地元の港で船が座礁して(どの程度の規模の船だか、何が原因でそんな事故が起きたのか…詳しいことはもう忘れたが、たしか当時地元の新聞ではニュースにはなっていた)、写真のモチーフとしてインパクトがあるし、めったに撮れるシチュエーションではないからという理由でその顧問の先生はおすすめしてくれたのだと思う。当時は被写体としてあまり惹かれなかったので、その船を撮りに行くことはなかったが、大人になってから、あの時「座礁した船」ってどれくらいの大きさだったのかなと考えることがある。

 

先日、埼玉県立近代美術館で写真展「ジャック=アンリ・ラルティーグ 幸せの瞬間をつかまえて」を見た。感想をものすごくざっくり言うと、カメラという新しい技術に熱狂したお金持ちが、その技術を試しながらめちゃくちゃ楽しんで写真を撮っている、そんなスタンスの作品がたくさん。 スポーツをする友人や自動車、飛行機など、ダイナミックな動きの一瞬一瞬を捉えた写真からは、カメラを持つことによって新しい物の見方を獲得したことの喜びが伝わってくる。
 作品の中には、ラルティーグが家族を総出演させて作った映画作品もあり、トリック撮影や役者の動きのコミカルさなどを見る感じでは、色々な映画を見て研究していたのかなーと思うような、思いのほかちゃんとした仕上がり。
 晩年は作品が雑誌に掲載されたり、さまざまなアーティストと交流を持ち、映画の撮影現場やスチールを撮ったりしていたラルティーグ。今回の展示で日本初公開となったカラー写真もとても素敵だった。
 今回、ラルティーグが撮った飛行機の写真を見て、「座礁した船」のことをふと思い出した。珍しいものを見にいきたい、カメラを持ってそれを写真に収めたいという視覚的な欲望。そういう単純な…見ることへの好奇心みたいなものが写真を撮る動機なんだと改めて思ったし、その好奇心がとても明るい形に表現されているのがラルティーグ作品の魅力のように感じられた。

 

Jacques Henri Lartigue, Photographer

Jacques Henri Lartigue, Photographer