yukarashi’s diary

おもに映画や写真について書いています。ドキュメンタリーが好きです。

「あの素晴らしき七年」 エトガル・ケレット著

 雑誌で書評を見て気になっていた新刊本「あの素晴らしき七年」 (新潮クレスト・ブックス) 。さくっと読めてすごく良い作品だった。
「愛おしい息子の誕生から、ホロコーストを生き延びた父の死まで」という帯のキャッチコピーを見て、父親の誕生日にあげようかなと考えていたが、予想以上に面白かったのでまだしばらくは自分の手元に置いておくことに。
 

  作者のエトガル・ケレットは、イスラエル・テルアビブ生まれ。本作は家族のエピソードを中心に綴った自伝的エッセイで、日常生活の描写にはテロや空襲警報など決して平穏とはいえない出来事も起こる。楽しいことも耐えられないほど辛いことも、いっしょくたにやって来るのが人生なんだと噛みしめながら、ほろっときたり、笑えたりする独特の描き方に魅了された。

 例えば、徹底的にリアルな描写を目指した映画より、虚実ない交ぜな映画のほうがリアルな心情がより伝わってくる場合が多々あって、そういうのってアートではよくあるけれど、実際の人生においても大げさな物語や作り話が生きる力を与えてくれることもあるのだと気づかされた。
 また、本作を読むと「親が子供に難しいことをわかりやすく説明するために、子供向けのたとえ話を考えること」についても色々考えたくなる。私は親になったことがないし、こういうのってすごく難しそうだなと常々思っているのだけれど、さすが小説家は違う…。しかもそのたとえ話が説教臭くもなくて、優しさとか知性があって…もう…。 
 訳者あとがきによると、エトガル・ケレットはイスラエルの新しい世代を代表する人気作家らしい。でもって、映画監督である妻と共に撮った映画もあるらしい。ってことで、今後も追いかけていきたい。

 

あの素晴らしき七年 (新潮クレスト・ブックス)

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