yukarashi’s diary

おもに映画や写真について書いています。ドキュメンタリーが好きです。

スティーヴ・マックイーン 「Cold Breath」 @RAT HOLE GALLERY

 表参道のRAT HOLE GALLERYでスティーヴ・マックイーンの展示「Cold Breath」を鑑賞。絶対見に行かねば…という心意気でもなかったのですが、ツイッターでこの展示を見に行った人の感想を検索していたら、“スティーヴ・マックイーンが自身の乳首をずっとつねったり、引っ張ったりする映像が延々流れている”だけだと知り、え?どういう作品?と思って足を運んでみました。

 

 スティーヴ・マックイーンについて、私は映画監督として認識していて、日本のギャラリーとか美術館でも映像作品を展示している情報だけうっすらと知っていたのですが、実際には見に行かなかったのでどんな作品なのかは把握していませんでした。

 

 そんな中、ふと先日、映画『それでも夜は明ける』(2013)を観て(本作は自由黒人から奴隷の身となったアフリカ系アメリカ人の回想録を元にした映画)、皮膚感覚に訴えるような痛みの描写が妙に際立った印象を受けました。

 

 

 同監督の前作『SHAME-シェイムー』(2011)はセックス依存症の男性を描いたドラマで、この映画はわりと好きなのですが、それはキャラクター描写が良かったわけじゃなくて(マイケル・ファスベンダー演じる主人公は、むしろ感情なんて全く表に出さないような描かれ方だった…)、セックス依存に陥った主人公の生活シーンが延々反復していく、そんな映像の積み重ねが現代人の虚無感みたいなのを浮かび上がらせていて、題材のわりにはドラマチックなストーリー展開ではなかったのが意外で、そこが印象に残っていたんですよね。

 

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 今回、RAT HOLE GALLERYで観た映像作品「Cold Breath(1999)は初期作品ということなので、長編映画デビュー以前のものになるわけですが、『SHAME-シェイムー』や『それでも夜は明ける』を観ていて感じた作家の視線がひとつのつながりを持って理解できて、何というか…すっきりしました。

 

 スティーヴ・マックイーンのことを検索してみると、映画監督としてではなくアーティストとしての作品は結構たくさん発表されているようなので、もっと全体像が分かるような展示を日本でやってくれたりしないかな、と期待しています。