yukarashi’s diary

おもに映画や写真について書いています。ドキュメンタリーが好きです。

『100人の子供たちが列車を待っている』(イグナシオ・アグエロ監督/1988)

 おそらくレンタル版DVDが出ていなくて見そびれていたのですが、大きいツタヤにあったのでVHSをレンタル。本作は、チリ郊外に暮らす子供たちが映画の授業を受ける様子を捉えたドキュメンタリー。ソーマトロープとゾートロープを手作りして残像が動くイメージを体感しながら映画の起源を学び、手押し車の荷台に乗ってカメラを覗きながらトラベリング撮影をやってみたり、みんなで映画のテーマを考えて絵コンテを書いたりと、子供たちがワクワクするような授業のシーンは見ているだけで本当に楽しそう。ゾートロープとか小学校の授業で作ったら楽しいだろうな…。

ここに通ってくる子供たちの家庭は貧しく、ゴミ拾いや靴磨きをしながら自分でお金を稼ぎ、ノートや靴を買ったり、家計を支える足しにしている。そんな環境ゆえに、映画を観たことがなく、この教室で初めて映画というものに触れる子供たち。

 子供にさまざまな教育の機会を与えてあげることがどれだけ大事かということを考えさせる社会的な作品でもあるけれど、「映画」教室というところが、映画好きにとってはたまらなく胸が熱くなるポイントだと思います。この教室が何か実用的な技能を教えてくれるわけではないけれど、幼い頃に「ああそういうものが世の中にはあるんだなー」と知ったときの喜びがあふれまくっている、そんな作品でした。

 映画教室の様子をメインに、自宅や仕事場で過ごす子供たちのインタビューが時折挿入されるだけのシンプルな映像のなかにも、当時のチリの状況がはっきりと投影されていて、みんなで映画を作るとしたら、「何をテーマにするか」という授業では、子供たちは「デモ」をテーマに選び、フィルムのコマを想定した模造紙に自分たちが目にしたデモの様子を描きます。

 映画の最後、子供たちはみんなでバスに乗って映画館へ出かけることに。取り立てて劇的なシーンはないはずなのに、どれもキラキラしていて素直に良いと思える映画でした。

 最近、絵本をさがしに国際子ども図書館に行ったのですが、必ずしも「子供のときに好きだった絵本=内容が子供向け」というわけではないんですよね。この作品のなかで子供たちが見る映画も、子供向けのアニメーションだけではないところが良いなと思いました。ちなみに私は映画が好きですが、両親ともに人混みが嫌いだったので映画館に初めて行かせてもらったのは結構遅かった気がします。